「これからのエネルギー」(槌屋治紀)

めざせ!再生エネルギー100%

「これからのエネルギー」
 (槌屋治紀)岩波ジュニア新書

「原子力は我が国の
重要なベースロード電源」。
福島原発事故など
どこ吹く風とばかりに、
現政権は位置付けてしまいました。
エネルギー政策は
国の将来像を描くことに
ほかなりません。
国民一人一人が自分の考えを持ち、
それを政治に反映させていく努力が
必要なのでしょう。

でも、
エネルギー問題は難しくてわからない。
そういう人にお薦めなのが本書です。
本書は「省エネルギーを進めながら
再生可能エネルギー100%を
達成していく」というスタンスで、
現在のエネルギー、
それも電力の将来像について
書かれた一冊です。

本書の特徴の第一は、
現在のエネルギー問題や
省エネ技術について
俯瞰的に描かれているということ。
前半は再生可能エネルギーの
技術と将来性について、
後半は原発問題や地球温暖化など、
環境問題との関わりについて、
丁寧に解説されています。

特徴の第二は、
エネルギー問題は
我々の生活スタイルと
切り離すことが出来ないということを
明確に述べていること。
私たちは現在の便利な生活を
犠牲にすることなく
エネルギー問題を解決しようと
考えがちです。
しかし、
生活を見直さないかぎり、
再生可能エネルギー100%達成は
あり得ないこと(原発や化石燃料に
たよらざるを得ないこと)を
痛感させられます。

以上の点から、
本書は中高生の、
というよりも大人も含めた、
エネルギー問題に
あまり詳しくない方への
入門書として最適と考えます。

もちろん、
この一冊ですべて
理解できるわけではありません。
広く俯瞰する視点であるため、
一つ一つの問題については
深入りしていません。
知識のある人が読めば、
底が浅いと感じるでしょう。
本書をきっかけに、
エネルギー問題に関心を持ち、
さらに追究するための一冊と
考えるべきです。

また、
筆者は再生可能エネルギー支持、
原発反対の立場です。
それでいて第6章「地球温暖化」の章で
「IPCC疑惑問題」を
取り上げているものの、
IPCCを擁護していることについては
一部の人たちから?が来そうです。

そうした疑問点は当然あるものの、
やはり入門書として
優れた一冊であることに
変わりありません。
中学校3年生の理科に
エネルギーを考える単元があります。
その前後に読んで欲しい一冊です。

(2018.12.7)

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